円形脱毛症とは頭部に円形やまだら状の脱毛斑ができる後天性の脱毛症です。円形脱毛症による脱毛斑の大きさは一般的に10円玉ほどの大きさが想像されますが、頭髪だけではなく眉毛や体毛といった箇所に発生したり、重症化すると頭部全体に及んだりする場合もあります。
一般的に「ストレスが主な原因である」と思われてきた円形脱毛症ですが、昨今その認識が誤りであると考えられています。円形脱毛症を発症する確固たる原因はまだ完全には解明されていませんが、現代の医学では自己免疫機能の異常が主な原因であることが分かっています。そのためアトピー性皮膚炎との関連性や遺伝的素因も関与が認められております。
円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は発症の原因だけでなく、発症対象や脱毛の状態にも明らかな違いがあります。
男性ホルモンが主な要因とされているAGAという脱毛症は、成人男性に発症します。AGAは思春期以降に発症する可能性がある疾患であり、年齢が上がるとともに発症率も上がることが知られています。
一方で円形脱毛症は自己免疫疾患などが原因とされているため、男性だけでなく女性や子どもなど全年齢層に出現します。
AGAの場合は髪の毛の生え変わる周期(ヘアサイクル)によって抜け毛が発生するため、抜け落ちる前に髪の毛が細く弱っていったり(軟毛化)、少しずつ抜けていったりと、髪の毛が急にごっそりと抜け落ちるということはありません。
しかし円形脱毛症の場合は髪の毛が抜け落ちる際に軟毛化するなどの予兆はなく、急に髪の毛が円形や楕円形に抜け落ちて頭皮が露出してしまうという特徴があります。
また、円形脱毛症は自覚症状はないことも多いですが、脱毛前や発症時に軽いかゆみや淡い紅斑が現れる場合もあります。また爪に小さな点状の凹みなどの変化がみられることもあります。
円形脱毛症は頭部の場合、脱毛斑の数や範囲、形態によって以下の5種類に分類されます。
現在、推奨されている円形脱毛症の治療法は主に4つあります。
局所免疫療法は、かぶれを引き起こす物質(SADBE、DPCPなど)を皮膚に塗布して発毛を促す治療法です。脱毛が広範囲に渡る多発型や全頭型に対し、年齢を問わず使用が推奨されています。しかし汎発型や甲状腺疾患を伴う場合では効果が乏しいとされており、頭痛や倦怠感、じんましん、色素沈着などの副作用も懸念されています。さらにアトピー性皮膚炎を併発している場合は、症状が悪化する恐れもあるため注意が必要です。また円形脱毛症に対するSADBEやDPCPの治療は保険が適用されません。施術頻度は週1回〜月1回程度まで、治療の経過を診ながら調整されます。
ステロイド局所注射療法は、ステロイド薬剤を真皮下層から皮下脂肪層に直接注射する治療法で、比較的症状の軽い単発型や多発型の治療に用いられます。ただし、ステロイド局所注射によって発毛効果が得られたという報告はありません。しかしステロイド局所注射をした部位はプラセボ(偽薬)と比較して発毛の評価指標が改善されたとの報告や、ステロイド局所注射が円形脱毛症の単発型と多発型の双方に有効であるという研究報告は存在します。したがって、ステロイド局所注射は円形脱毛症の改善を促すことが示唆されており、軽度の成人症例に推奨されています。投与は1カ月に1回程度で済み、通院時にその場で施術できるため比較的安全性の高い治療といわれています。
ステロイド外用療法は、ステロイド剤を頭皮に直接塗布する治療法で、1日1〜2回患部に塗布します。比較的軽度の単発型、多発型に用いられますが、最近の報告では中症程度の円形脱毛症にも効果が認められたとされています。しかし全頭型や汎発型患者に行なった研究では、一時的には症状が回復したものの、一部の患者は症状が再発し治療前の状態に戻ったという報告があり、重症度の高いレベルでは推奨されていません。
かつらの使用は円形脱毛症の病勢に直接影響する治療法ではありませんが、紫外線や外傷から頭部を守ったり、心理的サポートによりQOL(※4)が向上したりする面では有用だとされています。現在、海外では病的脱毛症に対するかつらが医療用具として扱われ健康保険の対象となっている国もありますが、日本国内では保険対象外です。
AGA(男性型脱毛症)の治療に用いられる発毛剤「ミノキシジル」は、円形脱毛症に対する効果としては十分に実証されていません。これは、円形脱毛症は自己免疫の異常が主な原因であると考えられているのに対し、AGAは主に男性ホルモンに起因する脱毛症であり、円形脱毛症とAGAの根本の原因が異なることが影響しているといえるでしょう。
しかし、少ない症例ではあるものの、国内でもミノキシジルによって円形脱毛症の改善が見られたとの報告があるため、単発型および多発型の症例に併用療法のひとつとして行なってもよいとされています。
当院にも「円形脱毛症を改善する治療薬が欲しい」といった患者様がご来院することがあります。中には「AGAだと思っていたが円形脱毛症だった」という患者様もいらっしゃいます。円形脱毛症の脱毛斑がミノキシジルで発毛する場合もありますが、より適切な治療を行うためにも、AGAでなかった場合は症状に合った病院をご紹介させていただいております。まずはお気軽にご相談ください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
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