びまん性脱毛症は疾患名ではなく脱毛症の分類で、様々な原因によって広範囲に薄毛が広がっていく“びまん性の脱毛症状”の総称です。特に女性の薄毛は部分的な脱毛ではなく薄毛が頭部の全体で進行し、髪の毛全体のボリュームが減っていくことが特徴とされているため、この「びまん性脱毛」に分類されます。
薄毛は性別や年齢に関わらず起こりますが、脱毛症は大きく分けて「びまん性脱毛」と「パターン型脱毛」の2つに分類できます。女性の薄毛の多くがびまん性脱毛である一方で、男性に起こりやすいAGA(男性型脱毛症)は頭頂部と生え際が進行するパターン型脱毛に該当します。部分的な脱毛が起こる円形脱毛症もパターン型脱毛に分類されます。
びまん性脱毛の代表的な疾患の一つには、男性に多く見られるAGAに英語で女性を意味するFemaleの頭文字をつけたFAGA(女性の男性型脱毛症)や、FPHL(女性型脱毛症)などと呼ばれるものがあります。びまん性脱毛の中で最も多いFPHLは明確な原因が未だ解明されておらず、加齢によるホルモンバランスの変化や様々な原因による“休止期脱毛”だと考えられています。
髪の毛全体を見ると、普通は一割程度が休止期の状態にありますが、“休止期脱毛”では生理的な脱毛を逸脱した多量の成長期毛が同時に、または徐々に休止期になり脱毛します。“休止期脱毛”は原因によって進行度合いが異なり、大きく「急性休止期脱毛」「慢性びまん性休止期脱毛」「慢性休止期脱毛」に分類されます。
急性休止期脱毛は急激に抜け毛が増える症状で、以下のようなある特定の要因によって起こると考えられています。
軟毛化を伴わずに半年以上かけて薄毛の症状が進行し、頭部全体に薄毛が広がっていく場合は慢性びまん性休止期脱毛が疑われます。ゆっくりと症状が進んでいくため、自覚症状がないことも多いといわれています。慢性びまん性休止期脱毛は全身疾患との関連性が高いとされており、主な要因としては以下のような理由が挙げられます。
急性休止期脱毛症や慢性びまん性休止期脱毛症などのような原因がない場合や、数年もの長い年月をかけて脱毛が生じる場合、比較的高齢で発症した場合は慢性休止期脱毛に分類されます。
髪の毛が簡単に抜けたり(易抜毛性)、1日100本以上の著しい抜け毛が見られたりしない限りは加齢による変化である場合が多く、徐々に薄毛が進行している可能性があり、閉経前後から顕著になることが多いです。加齢によるホルモンバランスの変化などが原因とされているFPHLは慢性休止期脱毛に分類されます。
慢性休止期脱毛も慢性びまん性休止期脱毛と同様に進行ペースが穏やかであるため、自覚症状がないことも多く、症状がある程度進行してから気付く方も少なくありません。
びまん性脱毛症はAGAと同じくホルモンが関係しているといわれていますが、まだ明確な原因は特定されていません。ホルモンの他にも様々な生活習慣が関わっていることも考えられますので、日々の生活の中で実施できる予防法もいくつかあります。日々のケアで薄毛を完全に改善することは難しいとされていますが、悪化を防ぐ手助けにはなるでしょう。
栄養バランスの整った食事を心がけるなど、食生活の改善は健やかな育毛環境を整える効果が期待できます。薄毛に良いとされている栄養素は色々とありますが、中でも“女性の薄毛に良い効果が期待できるもの”には以下のような食材が挙げられます。
女性ホルモンの一種「エストロゲン」と似た作用を持つ大豆イソフラボンを含んでおり、ホルモンバランスの乱れを抑制する効果が期待できます。
野菜や果物に豊富に含まれるビタミン類は、頭皮や育毛に必要な環境づくりをサポートしてくれます。
肉・魚・乳製品に含まれるタンパク質は、髪の毛の主成分となるケラチンの生成に必要となります。また育毛に良いとされる亜鉛や鉄分などのミネラルも含まれています。
飲酒が薄毛を招く直接的な原因となることはありませんが、過剰なアルコール摂取による体への悪影響が薄毛を助長する可能性があるのは事実です。特に女性ホルモンはアルコールの代謝を妨げるといわれているため、飲み過ぎには注意しましょう。
また、喫煙も体に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。正常な育毛を促進する健康的な体をつくるためにも、過度な喫煙は控えた方がよいでしょう。
睡眠不足による体への影響はたくさん考えられます。髪の毛の生成をサポートする成長ホルモンの分泌量の低下や生活習慣病のリスク上昇、免疫力の低下など、健やかな頭皮環境の育成を妨げる悪影響を受けないためにも、質の良い十分な睡眠をとることは大切です。
睡眠不足対策として、日頃から体をあたためて冷えを防ぐことや、寝る前はアルコールやタバコ、コーヒーなどの嗜好品を控えること、睡眠前はブルーライトを発する機器を避けることなどを実施するとよいでしょう。
誤ったヘアケアをしていると頭皮環境が悪化し、その結果として薄毛や抜け毛を招く恐れがあるため、日頃から正しいヘアケアを行うことが重要です。簡単に実施できる手段としては、シャンプーの種類・方法の見直しがあります。
シャンプーは洗浄成分である界面活性剤の種類によって洗浄力が異なるため、シャンプー選びの際には商品に含まれる成分を確認することが大切です。健やかな頭皮環境を育むには洗浄力が穏やかで頭皮に対する刺激が優しいアミノ酸系シャンプーをお勧めします。
またシャンプー後の「すすぎ」が足りないとシャンプー成分(界面活性剤)が毛穴や頭皮に残ってしまい、頭皮トラブルを招く可能性があります。しかしながら必要最低限の皮脂まで洗い落としてしまわないため、頭皮の乾燥を防ぐためにもシャンプーの回数は1日1回が望ましいでしょう。
ヘアブラシによる過度なブラッシングなども頭皮を傷つける可能性があるため注意が必要です。
びまん性脱毛症の改善に有効とされる治療薬には内服薬と外用薬があります。薄毛の症状や進行状況には個人差があるため処方される治療薬は様々ですが、内服薬と外用薬を併用して治療を進めるケースもあります。
ミノキシジルはAGA治療薬として使用されている有効成分で、ミノキシジルの“外用液”は日本皮膚科学会が定めた「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」において最も推奨度の高い“推奨度A”とされている治療薬です。
ミノキシジルは毛細血管を広げ血液の流れをスムーズにするだけでなく、主に髪の毛の成長を促す毛乳頭細胞に働きかけ、ヘアサイクル(毛周期)を延長させる働きを持っています。さらに、毛乳頭細胞からつくられる「発毛因子」の産生を促したり、毛乳頭細胞そのものを増殖させる働きもあることから、ミノキシジルは発毛を促す成分として位置づけられています。
ミノキシジルの外用薬は頭皮に直接塗布して使用する薬であるため、全身に影響を及ぼす副作用が出る可能性は低いといわれています。一方でミノキシジルの内服薬は有効性が高い治療薬といえますが、副作用としては外用薬同様に「初期脱毛」や「多毛症」が起こる可能性があります。また、ミノキシジル内服薬は肝臓で代謝される治療薬であるため肝臓に負担がかかること、ごく稀に血管拡張作用に起因して冠動脈が狭くなり一時的に心筋への血流が不足した状態になる狭心症などの心疾患が起こることなども副作用として挙げられます。
初期脱毛は一般的にミノキシジルを使用開始してから約2週間前後で脱毛が始まり、およそ4週間ほどで収束するといわれています。多毛症は体毛が増えてしまうという女性にとって悩ましい副作用ではありますが、ミノキシジルの使用を中止することで改善されます。
女性の薄毛に多いとされるびまん性脱毛症には様々な原因があるため、原因に対して適切な処置を行っていくことが大切です。一般的にびまん性脱毛症の改善には治療薬のミノキシジルやパントガールなどを使用するのが有用とされていますが、これらの薄毛治療薬での改善を望む場合は医師の診察が必要となります。
AGAヘアクリニック(以下、当院)は薄毛治療専門の病院です。男性の薄毛に多いとされるAGAの治療だけでなく、女性のびまん性脱毛症の治療も行っています。医師による診察は何度でも無料で実施しており、薄毛に対するお悩みを遠慮なく相談していただけるよう、完全個室での診察体制を設けています。びまん性脱毛症の疑いがある場合は、ぜひ一度当院へ診察にお越しください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。