別名「自毛植毛」と呼ばれる毛根移植は、自らの後頭部や側頭部から頭皮の一部を採取し、薄毛が気になる部分へ移植する治療方法です。植毛には自毛植毛（毛根移植）の他に「人工毛植毛」がありますが、現在では自毛植毛の方が一般的です。
頭皮の中でも前頭部や頭頂部はAGAの影響を受けやすいとされる一方で、後頭部や側頭部は影響を受けづらいとされています。毛根移植では移植前の頭皮の性質をそのまま受け継ぐため、AGAの影響を受けづらい後頭部や側頭部の毛根を移植することで移植後の薄毛改善効果が期待できます。
AGAにおける毛根移植での薄毛治療は、日本皮膚科学会による「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版（以下、ガイドライン）」において上から2番目に高い推奨度である推奨度B（「行うように勧める」）に位置づけられています。ただし、男性型脱毛症の診断が確実で、ミノキシジルやフィナステリドなどの薬剤療法を1年間行い、効果が見られなかった、または効果が十分でなかった症例に対して、他に手段がない場合に限ります。
毛根移植（自毛植毛）のメリット・デメリットをみていきましょう。
毛根移植（自毛植毛）では「FUT法」と「FUE法」の2種類が主流とされますが、他にも施術方法が存在します。
メスを使用して後頭部からドナーを採取した後、顕微鏡で株分けを行い移植部分に植え込む方法です。FUT法では頭皮ごとドナーを採取するため毛根が傷つきにくく、生着率が高いとされています。また、広い面積に移植できるのも特徴です。FUT法はメスを使用した施術になるため、採取後に縫合する必要があります。
専用のパンチを使用して髪の毛を毛根ごとに採取し移植先へ植え込む方法です。FUT法とは異なりメスを使用しないため痛みは大きくなく、傷口も目立ちにくいのが特徴です。しかし、FUE法は毛根一つひとつ採取するため手間がかかり、施術時間が長くなりやすいのが懸念点といえます。一度に多くのドナー採取が必要な場合には不向きな方法でしょう。また、最近ではFUE法の一種としてロボットによる植毛施術もあるため、治療前にしっかり確認しておくことをおすすめします。
植毛針を使用し、穴あけと植え込みを同時に行う方法です。採取したドナーを一つずつ人の手で植え込むため、植え込む間隔やサイズ、角度を自由に調節でき、よりナチュラルな仕上がりが期待できます。また他の施術法ではドナー採取前に植え込み先の穴あけを行いますが、ニードル法ではその必要がないため患者様の負担が少なくて済むのが大きな特徴です。しかし株わけに時間を要し、手間がかかるため高額になりやすい施術法ともいえるでしょう。
冷却による新鮮保存機能付きドリルを用いてドナーを抜き取り、移植する方法です。すぐに冷却されることでドナーの質が保たれやすく生着率が高いといわれています。
毛根移植で失敗しないためにはクリニック選びがとても重要です。クリニックごとに採用している施術法が異なりますので、どの施術法を行っているのかきちんと確認するようにしましょう。
加えて、施術の技術・実績が十分にあることはもちろん、カウンセリングが丁寧であるかどうかも失敗しないクリニック選びの鍵となります。植毛は医師の技量によって仕上がりに大きな差が生じやすいため、安さだけでクリニック選びをしないことをおすすめします。
AGAによる薄毛治療では植毛より投薬治療が一般的です。ガイドラインにおいても推奨度A（女性型脱毛症の使用に対して一部を除く）と最も推奨されています。投薬治療には主に3つの治療薬が存在します。
ミノキシジルは発毛を促す治療薬で、外用薬と内服薬の2種類があります。ミノキシジルには発毛因子である「インスリン様成長因子1（IGF-1）」や「血管内皮細胞増殖因子（VEGF）」の生成を促し、髪の毛の育成をサポートする働きや髪の毛を生成する毛母細胞の死滅を抑制する働きがあります。
ミノキシジルの副作用としては、初期脱毛・皮膚炎・動悸・息切れ・頭痛・めまい・手足や顔のむくみ・多毛症・肝機能障害・心疾患などが報告されています。また、外用薬、内服薬のどちらを使用するかで副作用の発症率は異なります。
外用薬はガイドラインにおいて男女ともに使用が推奨されていますが、内服薬に関しては臨床試験が十分に実施されていないことから薄毛治療薬として使用が推奨されてはいません。しかし、専門的な知識と経験のある医師のもとで処方が行われるのであれば安全で有用な治療薬であるといえます。
フィナステリドはAGAを引き起こす DHT（ジヒドロテストステロン）の生成に関与する「5αリダクターゼ」を阻害する働きがあり、AGAの進行を抑制する効果をもつ治療薬です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型がありますが、フィナステリドはⅡ型にのみ作用します。
フィナステリドの副作用発症率は低いとされていますが、勃起機能障害（ED）や性欲減退、精液減少、射精障害など性機能障害・抑うつ・肝機能障害などが副作用として報告されています。
またミノキシジルとは異なり、フィナステリドは女性への投与が認められていません。妊娠されている方や授乳中の方は胎児やお子様への影響も考えられます。さらにフィナステリドは皮膚からも吸収される恐れがあるため、女性の方は触れることのないよう取り扱いには十分注意が必要です。
デュタステリドはフィナステリド同様、5αリダクターゼの阻害効果をもつ治療薬です。フィナステリドと異なる点は、5αリダクターゼのⅠ型とⅡ型の両方に作用する点です。さらにⅡ型5αリダクターゼに対するデュタステリドの薬理作用はフィナステリドの3倍であり、フィナステリドと比べて約1.6倍の増毛効果があるとされています。一見、効果の高いデュタステリドを使用すれば良いように思えますが、フィナステリドとデュタステリドのどちらの治療薬を用いるべきかは薄毛の進行具合によって異なります。
デュタステリドの副作用としては、勃起不全（ED）、リビドー減退、射精障害など男性機能低下や性欲減退・乳房障害・気力の低下やうつ症状・蕁麻疹などが報告されています。また、デュタステリドも女性への使用が禁忌とされていますので、取り扱いには十分注意しましょう。
毛根移植による薄毛治療は有効ではありますが、ミノキシジルやフィナステリド等の投薬治療で効果を示さなかった場合の最終手段とされています。また、毛根移植による植毛法にはいくつか種類があるため、施術をする前にきちんとクリニックへ確認を行うようにしましょう。
薄毛への治療方法は毛根移植だけではありません。どの治療法が良いのかを検討するためにもまずは医療機関へ相談することをおすすめいたします。AGAヘアクリニックでは患者様お一人おひとりに合わせた治療法のご提案をしています。診察、カウンセリングは何度でも無料ですのでお気軽にご相談ください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。
