結論からお伝えすると、AGA(男性型脱毛症)は前頭部や頭頂部に薄毛の症状が現れるのが特徴とされるため、後頭部の薄毛についてはAGAが原因である可能性は低いと考えられます。
この理由としてAGAの発症メカニズムが関係しています。AGAは男性ホルモンである「テストステロン」が体内に存在する酵素「5αリダクターゼ」と結合することで発生する「DHT(ジヒドロテストステロン)」が毛周期を乱すことで生じる脱毛症です。DHT生成に関与する5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型が存在し、主にAGAに関与しているのはⅡ型の5αリダクターゼとされています。
Ⅱ型の5αリダクターゼは前頭部や頭頂部に多く存在するとされているため、それ以外の後頭部においてはAGAが発症する可能性は低いと考えられています。
後頭部とは頭の後方に盛り上がっている部分から下の部分を指し、自分の目で確認しづらい部位です。そのため変化に気づきにくく、いつの間にか薄毛が進行していることが多いのが特徴です。
後頭部に起こる薄毛の原因として考えられるものをいくつかご紹介します。
髪の毛の成長に必要な栄養は血液を通して頭皮まで運ばれますが、血行不良になるとそれらの栄養が頭皮まで行き届きづらくなり、発毛を阻害してしまう可能性があります。血行不良を招く原因としては、運動不足、ストレス、偏った食生活などが挙げられ、またデスクワークなどで長時間同じ姿勢が続くと血液循環を妨げる可能性があるとされています。
栄養バランスが偏った食事、ダイエットなどによる過度な栄養不足で髪の毛の成長に必要な栄養が不足する可能性があります。極端な栄養不足は髪の毛の成長を妨げ、後頭部の薄毛や抜け毛を招くことも考えられます。
ホルモンバランスの乱れが後頭部の薄毛を引き起こす可能性も考えられます。女性の場合、40代以降は急激に女性ホルモンが減少するといわれており、その影響で薄毛が進行していく場合があります。また年齢によるものだけでなく出産後にも女性ホルモンが急激に減少することにより薄毛が起こる可能性があり、これを産後脱毛と呼びます。
AGA以外の疾患が原因となり薄毛になる可能性も考えられます。後頭部に脱毛を引き起こす可能性がある疾患をいくつかご紹介します。
円形脱毛症は頭部に10円玉ほどの大きさで円形に脱毛班が生じる脱毛症です。「10円玉ハゲ」とも呼ばれるこの脱毛症は、一般的には脱毛班が1箇所にのみ生じますが、場合によっては複数生じる「多発型」や後頭部や側頭部が帯状に脱毛する「蛇行型」などいくつかの種類があります。
円形脱毛症の原因として現在は自己免疫疾患による説が有力ですが、他にもストレス、遺伝的要素、出産後の女性ホルモン低下によるものなどが考えられています。また円形脱毛症の40%がアトピー素因を持つといわれており、深い関連性があるともいわれています。
粃糠性脱毛は頭皮に生じた“フケ”が毛穴を塞ぐことで炎症を起こし、これにより髪の毛の成長が阻害されるために起こる脱毛症です。粃糠性脱毛は脂漏性皮膚炎という皮膚の疾患により発症するとされ、頭皮の痒みや赤みなどを伴います。
瘢痕性脱毛症とは外傷や熱傷、膠原病など何らかの疾患が原因となり頭皮が瘢痕化することで髪の毛を生成するもととなる毛包自体が破壊され、髪の毛が再生できなくなってしまうことで起こる脱毛症です。瘢痕部分には、皮膚の赤みやかさぶた、色素着色などを伴う場合があります。
牽引性脱毛症はポニーテールや三つ編みなどにより頭皮が長いあいだ同じ方向に引っ張られることで特定の部位に負荷がかかり発症する脱毛症です。髪を束ねることが多い女性に起こりやすい脱毛症ともいわれています。また、髪の毛を束ねていなくてもいつも同じ分け目でいることで同じ部位に負荷がかかり、牽引性脱毛症を発症する可能性もあります。
普段の生活の中で実践できる後頭部に起こる薄毛の対策方法をいくつかご紹介します。
忙しいとコンビニ食やファストフードなど栄養の偏った食事になりがちですが、髪の毛の正常な成長にはバランスの良い栄養摂取が不可欠です。
特に髪の毛のもととなる「タンパク質」や、タンパク質の代謝をサポートしたり健やかな皮膚環境を保ったりするのに役立つ「ビタミン類」、タンパク質合成をサポートする「亜鉛」などは不足しないよう気をつけたい栄養素です。
しかし、一つの栄養素を過度に摂取するとかえって体へ悪影響を与える可能性もあるため、基本的にはバランスの良い食事を摂取することが重要といえます。コンビニなどで手軽に食事を済ませる場合でも、炭水化物ばかりではなく、野菜や肉、魚類など栄養をプラスするよう意識してみてください。
睡眠は1日の疲れを回復する効果だけでなく、体の免疫機能の回復やストレス軽減の効果など、私たちの体を健康に保つために欠かせない大切な要素です。特に、睡眠時に多く分泌される成長ホルモンはタンパク質合成や細胞増殖、代謝促進などの働きを持つため、きちんと分泌されるように日頃からしっかり睡眠をとることが望ましいといえます。
仕事などで睡眠時間が短くなってしまう場合でも睡眠の質をよくするよう心がけましょう。睡眠直前のスマートフォンやパソコンの操作、コーヒーやタバコなどの嗜好品の摂取は睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため控えた方がよいでしょう。
ストレスは自立神経を乱し、血流を悪くする可能性があります。血流が滞ると髪の毛の成長に必要な栄養が頭皮まで行き届きづらくなり、発毛を阻害する恐れがあるため、適度にストレスを発散することが大切です。
ストレス発散法としては、自分なりの趣味などを持つとよいでしょう。また現代社会は情報に溢れ、脳が刺激を受けやすく、ストレスを感じやすい状況でもあります。ストレスを感じた際は、スマートフォンやパソコンなどから少し距離をおいて脳を休息させるとよいかもしれません。
頭皮マッサージには頭皮の血行を促進する効果が期待できます。頭皮マッサージは頭皮が乾燥した状態で行うと傷つけてしまう恐れがあるため、入浴中など保湿された状態で行うことをおすすめします。また入浴中、頭皮と合わせて全身をマッサージすることで血行促進効果が高まるとされています。
後頭部の薄毛の原因は一つではなく、個人の判断で特定するのは難しいものです。またセルフケアで行える範囲の薄毛対策だけでは、人によって十分な効果が期待できない可能性もあります。薄毛を根本から改善するためには、原因にあった対処法を行うことが大切です。薄毛の原因を明らかにし、適切な治療を行うためにも専門医療機関の受診をおすすめします。
後頭部の薄毛の原因はAGAである可能性は低く、その他の原因が考えられます。薄毛治療に関しては原因に合わせた対処法を行うこと、そして早期段階で治療を行うことが好ましいといえます。
AGAヘアクリニック(以下、当院)では、患者様お一人おひとりのお悩みをしっかりカウンセリングし、ご納得いただいた上で治療を行います。そのため、カウンセリングと診察は何度でも無料で行わせていただいております。ぜひ一度当院までご相談ください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
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